AI議事録ツールは面接の文字起こしを自動削除できる?
保存ルールは採用の進捗ではなく時計で動きます。そのすき間の埋め方をまとめました。
この記事の内容
できるツールはありますが、調べた範囲で「ポジションが埋まったら削除」できるものはありません。Fellow、Fireflies、Otter、Granola、Tactiq、Ashbyは、録音や文字起こしを一定期間後に削除でき、多くはEnterpriseプラン限定です。採用期間と法定の最低保管期間をカバーする期間を設定するか、採用が決まった日に手動で削除しましょう。
なぜ「採用が決まったら削除」できるツールがないのか
AI議事録ツールの保存設定は、採用パイプラインではなく時計で動きます。会議の日から(Tactiqの場合は文字起こしの最終編集日から)日数を数え、期限が来たら削除します。ツールは求人がいつ締め切られたかを知りません。その情報はATS(採用管理システム)にあり、今回読んだヘルプページのどれも両者の連携を説明していません。
現実的な選択肢は2つです。最も長い採用期間と法定の最低保管期間をカバーできる長さの期間を設定し、一部のデータが求人終了後も残ることを受け入れる。あるいは、求人ごとに面接をまとめておき、採用が決まった日に手動で削除する。両方を組み合わせることもできます。長めの自動削除を安全網にし、締め切り時に手動で削除する方法です。
文字起こしを自動削除できるAI議事録ツール
2026年10月22日時点で、各社のヘルプページに書かれている内容です。多くはEnterprise向けの機能で、アプリ内ではなく提供元のチームが設定するものもあります。
| ツール | 削除対象 | 期間 | プランと設定者 |
|---|---|---|---|
| Fellow | 録画・録音(動画、音声、文字起こし、クリップ)。AIノートは別ルールで、録画より先に消えることはない | 日数で指定。0にすると処理後すぐに削除 | Enterprise。ワークスペース管理者が全会議に一律で設定 |
| Fireflies | 会議データ | 1週間から1年 | Enterprise。会議のオーナー、またはワークスペース全体なら管理者。今後の会議のみ対象 |
| Granola | 文字起こしのみ。ノートは残り、音声はそもそも保存されない | 1日、1週間、1か月、3か月、6か月、1年 | 各ユーザーが自分の設定で指定。Enterpriseのワークスペース方針はGranolaへの依頼で設定 |
| Otter | 会話全体、または音声・動画のみ、文字起こしのみ、その両方(それぞれ別の期間) | 個別設定、最短24時間 | Enterprise。管理者がOtterのアカウントマネージャーに依頼 |
| Tactiq | 文字起こし(アーカイブ後、30日で完全削除) | 最終編集から6か月から60か月 | BusinessとEnterpriseの管理者 |
| Ashby(ATS内の議事録機能) | 録画、文字起こし、ノートをそれぞれ別ルールで | 設定したルール | AI Notetaker設定のData Retentionタブ |
| Metaview | 録画、文字起こし、個人データ | 初期値は2年、依頼で変更可能 | Metaviewに依頼。個別の録画はワンクリックで削除可能 |
期間そのものより大事な点が3つあります。対象範囲:Granolaは文字起こしを消してもノートは残し、Fellowは元の録画より先にAIノートを消すことはありません。Otterは、文字起こしが消えると要約を再生成できなくなると注意しています。タイミング:Firefliesの自動削除は今後の会議にしか適用されませんが、Fellowは設定を保存してから1時間以内に、警告なしで既存の対象データを削除します。GranolaのEnterprise方針も、有効化した時点で古い文字起こしを削除します。猶予期間:Tactiqはアーカイブした文字起こしを30日間保持してから完全に削除します。
法律が求めること:用が済んだら消し、義務があるものは残す
面接データの保管は、2つの方向に引っ張られます。個人情報保護法は、必要以上に長く個人データを持たないよう求めます。労働法、特に米国の法律は、採用記録を一定期間残すよう求めます。よいポリシーは、データの種類ごとに両方を満たします。
EUと英国:保存期間の制限
GDPR第5条1項(e)は、個人データを本人が識別できる形で保存するのは目的に必要な期間に限るとしています。採用面接の録音、文字起こし、AIノートは個人データです。候補者は第17条に基づき削除を求めることもでき、法的な保存義務などの例外がない限り、1か月以内に対応する必要があります。
フランスのデータ保護機関CNILは、採用ガイドで具体的な目安を示しています。不採用の候補者は採用終了から最長3か月、タレントプールは最後の連絡から最長2年(同意、または明確な通知と簡単に拒否できる方法が必要)、証拠のための保管は決定から最長5年です。面接の音声や動画については、具体的な理由がない限り保存は必要とは考えにくく、採用決定を超えて保存する必要はないとしています。
米国:削除期限ではなく最低保管期間
米国連邦法には、面接データをいつまでに削除せよという一般的な期限はありません。定めているのは主に下限です。Title VIIとADAの対象となる雇用主は、応募書類その他の採用関連記録を、記録の作成日か人事上の決定日の遅い方から1年間保管しなければなりません(29 CFR 1602.14)。ADEAでも応募書類の保管は1年です(29 CFR 1627.3)。従業員150人以上で15万ドル以上の契約を持つ連邦政府の請負業者は2年間です(41 CFR 60-1.12)。
差別の申し立てや訴訟が起きた場合は、最終的に決着するまで関連する人事記録をすべて保管する必要があり、同じ職に応募した他の候補者の記録も含まれることがあります。これがリーガルホールドで、どの自動削除よりも優先されます。AIの文字起こしが保管義務のある採用記録に当たるかは、法務担当に確認すべき問題です。両方の目的を満たす一つの方法は、書面の評価は必要な期間保管し、生の録音は早めに削除することです。
州法には削除を促すものが2つあります。イリノイ州のArtificial Intelligence Video Interview Actは、応募者に面接動画を録画させてAIで分析する雇用主が対象で、応募者から求められたら30日以内に動画を削除し、コピーを受け取った全員にもバックアップを含めて削除させる必要があります。カリフォルニア州では2023年1月から、応募者もCCPAによるプライバシー権を持ち、対象企業に削除を求める権利があります(例外あり)。
採用が決まった日から始める保存計画
ポジションが埋まった日(または採用なしで締め切った日)を起点にし、データの種類ごとに別の時計を持たせましょう。この表はルールではなく、法務担当と調整するための出発点です。
| データ | 採用決定後の保存期間の目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 音声・動画の録画 | できるだけ短く。EUでは正当な理由がない限り採用決定まで。米国では採用記録に当たるか法務担当に確認 | 最も機微で、決定後はほとんど必要ない |
| 文字起こし全文 | 録画と同じ。ただし書面の評価がそれに依存する場合は別 | 録画をテキストにしたものだから |
| 書面の評価と判断理由 | 米国:最低1年(大規模な連邦請負業者は2年)。フランス:不採用者は最長3か月、証拠保管は最長5年 | 判断の正当性を説明するための記録だから |
| 採用した人に関するメモ | 従業員ファイルへ移し、雇用関係の保存ルールに従う | 目的が変わり、時計も変わる |
| タレントプール | 別の根拠がある場合のみ。フランスでは最後の連絡から最長2年、同意または明確な通知が必要 | 最初の応募ではカバーされない |
ツールに自動削除がない場合の手動運用
ツールに自動削除がない、または自社にないプランの機能である場合でも、書面にして担当者を決めておけば手動の運用で回せます。
- ルールを書く。データの種類ごとに1行:何を、採用決定から何日後に、誰が削除するか。同じ内容を候補者への通知にも書きます。
- 求人ごとに保存場所を1つにする。1つの求人の面接はすべて1つのフォルダに入れ、締め切りの作業を検索ではなく1回の削除にします。
- 先に判断記録を移す。削除の前に、評価基準に基づいた書面の評価がATSに入っていることを確認します。
- 保留の有無を確認する。苦情、申し立て、訴訟、候補者からの未処理の請求があれば、そのデータの削除は止めます。
- 元データを消し、次にゴミ箱を空にする。録音、文字起こし、AIノートを削除し、ゴミ箱を空にするか保持期間が過ぎるのを待ちます。多くのツールは削除したデータをしばらく保持します。
- コピーを追いかける。共有リンク、ダウンロードしたファイル、メールやSlackに貼った要約、Notionやドライブへのエクスポートは、元データを消しても消えません。
- 記録を残す。日付、求人、削除したもの、実施者。後で問われても、ポリシーどおりに運用したことを示せます。
Relineが今できること、できないこと
Relineはボットなしで面接を録音します。音声はあなたのパソコンで取り込まれ、その後クラウドで文字起こしされ保存されます。録音の前に候補者へ伝えることは変わりません。計画を立てられるよう、削除の仕組みを正確に説明します。
- 自動削除のスケジュールはありません。管理者が「90日後に録音を削除」のようなワークスペース全体のルールを設定することはできません。ツール側で削除を強制したい場合は、上の表のツールを選ぶか、手動の運用を行ってください。
- ゴミ箱は30日で自動削除。削除したノートやフォルダはゴミ箱に入り、そこに残ったものは30日後に自動で完全に削除されます。
- 「完全に削除」で即時に削除。ゴミ箱で「完全に削除」を選ぶと、ノートは録音、文字起こし、チャットが質問に答えるためのインデックスとともにすぐ削除されます。録音だけを削除する専用ボタンはありません。
- 求人ごとに1フォルダ。フォルダを完全に削除すると中身もすべて削除されるので、1つの求人の面接を1回の操作で消せます。
- 作成者かオーナーのみ。ノートを完全に削除できるのは、ノートの作成者かワークスペースのオーナーだけです。ワークスペース管理者がメンバーのノートを完全に削除することはできません。
- 既定で非公開。削除するまで、面接のノートはアクセス権を与えた人にしか見えません。
ATSに貼り付けた要約、Slackのメッセージ、Notionへのエクスポートなど、Relineの外に作ったコピーは、それぞれのツールの保存ルールに従います。
自動削除に頼る前に提供元へ確認すべきこと
- 正確に何が削除されるか:音声、動画、文字起こし、AIノート、要約、クリップ、検索やチャットのインデックス。
- 何を起点に期間を数えるか:会議の日、最終編集日、それ以外。
- 新しいルールは既存のデータにも適用されるか、今後の会議だけか。
- ゴミ箱やアーカイブの期間はあるか、バックアップには削除済みデータがどれだけ残るか。
- 管理者が全員に一律のルールを強制できるか、ユーザーごとに変更できるか。
- リーガルホールドのために削除を一時停止できるか。
- どのプランに含まれるか、アプリ内で設定するのか提供元のチームが設定するのか。
まとめ
調べた範囲で、ポジションが埋まったことを知っているAI議事録ツールはありません。適切なプランなら、期間指定で削除できるツールはいくつかあります。安全なのは、データの種類ごとの書面ルール、ツールが対応していれば期間ベースの自動削除という安全網、そして書面の評価をATSに移したうえで締め切り日に行う手動削除の組み合わせです。
よくあるご質問
- AI議事録ツールは、採用が決まったら面接の文字起こしを自動削除できますか?
- 調べた範囲では「採用決定」をきっかけに削除できるツールはありません。Fellow、Fireflies、Otter、Granola、Tactiq、Ashbyは期間指定で削除でき、多くはEnterpriseプランです。最も長い採用期間と法定の最低保管期間をカバーする期間を選ぶか、締め切り時に手動で削除してください。
- 面接の録音や文字起こしはどれくらい保管すべきですか?
- EUでは必要な期間に限ります。フランスのCNILは、正当な理由がない限り面接の音声を採用決定後まで保存する必要はないとしています。米国では、Title VIIとADAの対象となる雇用主は採用記録を最低1年保管します。文字起こしへの適用は法務担当に確認してください。
- 文字起こしを削除すると、AIノートも消えますか?
- ツールによります。Granolaは文字起こしを削除してもノートを残します。FellowはAIノートを録画と同時かそれ以降にしか削除しません。Otterは、文字起こしが消えると要約を再生成できないとしています。ノートに頼る前に確認しましょう。
- Relineには自動削除のスケジュールがありますか?
- ありません。現在、管理者がワークスペース全体の削除期間を設定することはできません。ゴミ箱のノートやフォルダは30日後に完全に削除され、ゴミ箱の「完全に削除」を使えば、ノートとその録音、文字起こしをすぐに削除できます。
- 候補者から面接データの削除を求められたら?
- GDPRでは候補者は削除を求めることができ、法的な保存義務などの例外がない限り1か月以内に対応が必要です。イリノイ州では、AIで分析した面接動画を請求から30日以内に削除しなければなりません。カリフォルニア州の応募者はCCPAに基づく削除請求権を持ちます(例外あり)。
- Teams録画の120日の有効期限でコンプライアンスは足りますか?
- Microsoftによれば足りません。有効期限機能はストレージ節約のためで、コンプライアンス要件は強制しません。保存ルールにはMicrosoft Purviewの保持ポリシーを案内しています。また、元の場所から移動した録画は有効期限の対象外になります。
関連記事

AI議事録ツール導入前のIT管理者チェックリスト12項目
IT部門がAI議事録ツールを承認する前に確認する中立的なチェックリスト。SSO、SCIMによるアカウント削除、チーム単位の閲覧範囲、保存期間、Slackのスコープ、展開計画まで。

面接のメモの取り方:テンプレート、守るべきルール、AI活用
採用面接やユーザーインタビューのメモの取り方。書くべきこと、絶対に書いてはいけないこと(フランスCNILとEUのルール)、コピーできるテンプレート、ボットなしのAI活用を解説。

AI議事録は誰が見られる?チーム単位で閲覧を制限する方法
AI議事録を非公開に保ち、見られる人をチーム単位で絞る方法。マネージャーが自チームだけを見る設定、共有リンクのリスク、1分でできる確認手順を解説します。